<公開講座>「長距離走・マラソンでつくる工程表」〜スタートラインに立つまで〜
  2018年1月19日(金) 於)足立区生涯学習センター

 「公開講座」の講師としてお話しした講座の内容の一部です。


【長距離・マラソンの工程は「登山」といっしょ】
 

これからお話しする行程にはあるスポーツとよく似たところかあります。

どんなスポーツかわかりますか?
「登山」です。
マラソンや長距離走はスタートとの日時が決まっています。行程表が目指すのはスタートラインに立った時点で最高の状態であることです。つまり山の頂上にいること。ピークの状態であることです。
  しかし、どんなに長い時間をかけて準備をしてトレーニングしても頂上にアタックするタイミングは一瞬、そしてそこには長くいることはできません。マラソンで本当のピークは3・4日程度ではないかと言われています。 よく聞く話は、レース前には調子良かったのに思ったように走れなかったとかいうのは心身ともにピークを外しています。
 またピークの状態はこれ以上ない状態であり、裏を返せばギリギリの危険な状態であり、これ以上やると怪我をしてしまう。もしくは油断すると風邪をひいてしまう抵抗力の弱い状態であるとも言えます。これまでオリンピックや駅伝で怪我や体調不良で欠場する話はよく聞きます。まさに頂上アタックのタイミングは一瞬です。


【選手には個々に「波」がある】
 
 
選手には波があります。他のスポーツでも夏場に強いとか秋口に強いとか、選手には個々に必ず無視できない調子の波があるのです。長距離では多くの場合はスピードタイプの選手は振れ幅が大きく、比較的短い周期の波であり、スタミナタイプは大きく触れないがなだらかな波形です。乱暴に言ってしまえば前者は大きな力を発揮するが不安定。後者は爆発的には力を発揮しないが安定していると言えます。この波を少しずつ操作しながらピークをスタート日時にもってくるのです。
  箱根駅伝でメンバー10人(補欠を含めて15人)のピークをぴたりと合わせることがいかに大変かがわかります。指導者の力だけではなく、メンバー一人一人がこうしたことを理解して実行できることが決め手になります。選手としてもただ持ちタイムをあげるだけではなく、自らを知り、コントロール出来る自立した選手になれるかが将来を決めるのです。


【考え方はごく簡単】
 
 
さて、すでにお話ししたと思いますが、これまでのトレーニング方法はほとんどがニュージーランドのアーサー・リディアードのいわゆるリディアード方式」が基礎となっています。
  リディアード方式はどんなインターバルトレーニングをやるかとかレペテーショントレーニングをどうやるかではなく、様々な練習方法をどのように配置するかという事に主眼が置かれています。
 リディアード方式はローマから東京オリンピックにかけて、共産圏のように特性によって選ばれた選手を育成するのではなく、クラブチームに集まった一般の選手を数多く育成したところに大きな意味があるのです。
 これからお話しするのはやはりリディアード方式がベースになっています。
 ただし、考え方や方法は更にアレンジされています。リディアード方式自体は多くの書籍で紹介され、多くのランナーの知るところですが、ここではその先の具体的な実践例で示して行きます。リディアードのトレーニングは大雑把に五段階のピラミッドで構成されています。難しく掘り下げるといくらでも難しくなり、それはそれでそれらしいのですが、出来るだけ簡単にわかりやすく説明をします。

まず、レースまでの行程には3つの大きな段階があります。それは
「1.長く走り続けることが出来ること。」 いわゆるスタミナを養成する事
「2.速く走ることが出来ること。スピードを養成する事
そして3つ目はなんでしょう?
それは「長く速く走り続けることが出来ること。」です。

この3つが基本となります。ごく単純です。どんなに難しい言葉もあいうえお」で構成されているのです。

この3つについて説明します。

【要素1:長く走り続けることができること】
 
まず第1に長く走り続けることが出来るということは、有酸素運動能力を高めるということです。いわゆるスタミナをつけるとよく言いますので、ここではそう表現します。
どうやってスタミナをつけるか、それは長く走り続けることにより獲得することが第1です。例えばLSD、またかつての北欧でおこなわれたファルトレクトレーニングやスピードを抑えた本数の多いインターバルトレーニングも考えられます。
 時々目にしますが、マスクをして走ったり、高地トレーニングという手法もあります。いずれも酸素の供給量を減らしてトレーニングするということです。当然、長く走り続ける事は出来ませんので、短時間で効果を得ようというわけです。
 ここでのもう一つの大きなポイントは、
「距離観を変える」という事です。
マラソンは別としてだいたいレースの倍の距離以上はこなします。一度高い山に登ったら、その経験から同じ山やより低い山は余裕を持って登れるのです。
かつて、レース本番には緊張して体調を崩したりして普段での力が発揮出 来ない時期が続きました。周囲からは自信を持ってとよく言われましたが、その根拠がわからないのです。大学からは本番でないと力が発揮出来なくなっていました。わけのわからない自信がついたという認識はなく、ただ一つ言えるのは、「試合は練習に比べて楽だ」と思うに至ったのは大きな要因だと思っています。

さて長い距離を走るスタミナを養成するには覚えておかなければならない事項がいくつかあります。スタミナを養成するということは酸素を効率的に取り入れて体の隅々まで行き渡るように毛細血管を発達させる必要があります。
これにはかなりの時間がかかるのです。何日もかけて繰り返し長い時間走り続けなければならないのです。しかし、人間ですので、これにはかなりの疲労が伴います。更に人間には日常の状態つまり恒常性を維持しようとする働きがあります。何十キロ走ってもそのまま放っておけば、すぐに元に戻ってしまうのです。つまり、せっかくつけたスタミナも放っておけば”蒸発”してしまうのです。
 昔よくこう言われました。
一日休むと1週間戻ってしまう」と。この言葉が正確かどうかは別として、常に補充し続けなければならないのです
。しかも疲労も加味しなければならないのです。長い時間をかけて、繰り返し身体に教えこまなければならないということですね。


【要素2:速く走ること】
 
では次に速く走ること。つまりスピードです。スピードはある程度先天的だと言われます。それは生まれつきの敏捷性なり、鍛えてもある程度以上は後天的に獲得することが難しいということです。また、獲得したスピードは長く維持される。ある意味球技のスキルに似たところがあります。一度自転車に乗れると、長い間乗ってなくても乗れるのです。
 長距離走の場合は、スピードがあるというのは、短距離的なスプリント力、1500mのような中距離的なスピード、そして駅伝やマラソンで5000mとか10000mの走力を指標にすることがあります。例えば箱根駅伝ではよくこの持ちタイムで比較されます。 いわゆるトラック競技での力がスピードとして比較され、ハーフマラソンなどの結果がスタミナの指標としてつかわれるのですが、我々はよくこの持ちタイムに裏切られるのです。
 もちろん、これらのスピードがあれば、前半からハイペースのレースやラストのスプリント勝負では有利なことは確かです。確かにトップを狙うためには必要な要素に間違えはありません。
ただし、長丁場になるとそう簡単ではありません。必要なのは20キロ、30キロ持続出来るスピードであり、さらに20キロ、30キロ、40キロ走った後に出せるスピードなのです。したがって短距離のスピードがなくても悲観することはありません。たとえ1000メートル2分30秒台のスピードを持っていても40キロ走ったあとにこのスピードでは走れないのであり、スタミナを残したあなたが3分で走れば十分に勝つ可能性はあるのです。ここでは単純なスピードは求めていないのです。


【要素3:長く速く走り続けること】
さて、最後の項目、長く速く走り続けることです。
平たく言うとスタミナとスピードを兼ね備えることです。あるいは結びつけることです。
まずスタミナとスピードの関係について触れておきます。
 はじめにお話ししたスタミナを養成するには長い期間、長距離を走る練習を繰り返ししなければなりません。放っておくとスタミナは蒸発してしまうことはすでに説明しました。
 速くないスピードで長く走り続けると当然速い動きが抑制されてスピードは鈍ります。スタミナを養成する時期はスピードが出ない期間でもあります。主に試合から離れた2月3月前あたりで時々マラソンやハーフマラソンに出たりします。この時期には5000mや10000mの記録は出にくいです。
 逆にスピードを養成する時期は長い距離を走る頻度が減るのでスタミナが蒸発してしまう時期です。5000mや10000mのトラックで記録の出る時期はマラソンなどははしりません。
 このようにスタミナとスピードはある意味で対局にあるのですが、実は表裏一体なのです。完全にいずれかに寄るのではなく、大きなスタミナを手に入れ、スピードを高めていくことで競技力は高まります。
この時期には、レースに近い距離をレースに近いスピードで走りこみます。時にはレースに近い負荷をかけたあとにさらに追い込みます。レースの距離をスピードを維持しながらしっかりと走り終えることが出来る競技力として作り上げるのです。そして最後は力を発揮できるための調整です。
このプロセスがリディアード方式です。リディアードのピラミッドを思い出していただけたら構成が分かると思います。
 前に大東文化大学の全盛期に監督をされていた青葉監督と仕事をする機会があった時にこんなことを言われていました。競技力はスタミナの裾野から綺麗に山頂に向かう富士山のようであり、スピードとは山頂付近に降り積もる雪である。この言葉がこれまでの話を集約していると思います。

 長い期間、長距離を走り、裾野を広げ、スピードを加味しながら競技力として完成させたいく。つまり重要なのはレースの数ヶ月前にいかにスタミナを養成し、身体に染み込ませるか、そして氷に例えるなら、氷を溶かしてスピードに変えていくということが言えるかと思います。
 また、地学でアイソスタシーという言葉を習いました。氷山の水面上に出ている部分が大きければ大きいほど、水面下の部分も大きいということだと記憶しています。より大きな結果を求めるならば、水面下の部分も見合うように大きくなければならないのです。
実は今お話ししたことは少し掘り下げてお話ししましたが、長距離やマラソンをされている方にとっては比較的一般的なことです。


【具体的な練習の仕方】
 
さて、今日これからお示しするのは、この考え方を基にした具体的な考え方や方法です。
 まず1日の練習は朝練習と本練習で構成していますが、朝はあくまで本練習にスムーズに入れるようにするためのものでその日その日でアレンジしています
練習はまずはスタミナがベースになります。距離を踏まなければなりません。マラソンだと月間1000キロとよく言います。一日35キロ弱と言ったところでしょうか。すごいですね。今では女子選手でも200キロ以上は走るといいます。

<「ポイント練習」の着実な消化が大事>
 
 30キロという走行距離が15キロを2回にわけて走るのと30キロを一気に走るのとは全く意味が違います。当然負荷と距離感の克服と心肺機能の向上という意味では一気に走る方が効果的です。ただこれを毎日は出来ません。そこでしっかり負荷をかける日を決めて、そこに集中します。この練習を「ポイント練習」と言っています。
 この「ポイント練習」はしっかり走れなければなりません。そして次のポイント練習につないでいくのです。
 ここでの重要な点はもう一つあります。スタミナは蒸発してしまうと説明しました。いくら心肺機能を強化しても元に戻っていくのです。それ故に繰り返し繰り返し負荷をかけなければなりません。この点で高地でしかも走ることが日常であり、先天的に持久的身体能力を獲得しているケニアやエチオピアの選手とは違いがあるのです。

 ポイント練習として長い距離を走った翌日には5キロなどの短い距離の負荷をかけます。これを合わせて「ポイント練習」です。心肺機能に負荷をかけたのちに心臓に負荷をかけます。また早い動きを入れます。当然、記録は出ませんし、感覚的にはもがいている感じです。
 これを私たちは、沸騰したお湯にフタをすると言います。心肺機能への効果をより身体に馴染ませ、蒸発するスタミナを出来るだけ逃がさないようにフタをするのです。これはかなりきついです。
 そして、3日程度の間をおいて次のポイント練習に入るのです。
この3日間は、「ポイント練習」の疲れを取り、次のポイントにベストな状態で迎えられるようにする重要な期間です。ちょうど野球の先発投手が中5〜6日でマウンドに立つサイクルを考えていただければわかりやすいです。このつなぎの期間は、他の選手と一緒には練習しません。あくまで自分の体調を見てそれぞれが自分で考えて何をやるのかを決めるのです。次のポイントにベストな状態で臨まなくてはならないのです。
 「ポイント練習」にはもう一つの決まったパターンがあります。それは前日です。身体に負荷をかける前には予告が必要です。そのために前日には1000m前後の早い刺激を入れています。これを引き金と言っています。考え方はレース本番も同じです。「ポイント練習」をいかにベストな状態で消化できるかが重要です。
このように「ポイント練習」を重ねていってもやはり、疲労が蓄積してきます。そうなると「ポイント練習」の目的からズレを生じます。「ポイント練習」は目的に向かう基点となるものであり、一つ一つの目的を理解して、消化していかなければ行程を誤ってしまうのです。
 そのために状況によってポイントの間を長く取ることがあります。その際には、間に短いスピードの負荷をかけます。これはいわゆる刺激練習であり、次のような意味があります。
 まず状態、走れ具合を見ること、それと同時に疲労の度合いを測ること。短い刺激を入れると疲労が表面に出てくるのです。そこからまた修正をかけていきます。
このようにポイント練習を重ねていくのですが、この一連の流れの途中に大きな評価の機会を設定します。中間的な評価となるレースに出ます。
 ここでこれまでの流れが正しく推移しているのか?足らないとしたら何が足らないのか、修復することが出来るのか?を測る


<次の段階へ>
 さて、ここで一つの段階が終わり、さらなる段階に突入します。「ポイント練習」の質が大きく変わってきます。明らかに実践的なスピード養成への移行です。ここで言うスピードとは先に説明した単なる速さではなく、絞った雑巾を更に絞り出すスピードです。
次の「ポイント練習」は、身体がスタミナを忘れないように長めのビルドアップを入れてから短いきつい負荷から入ります。そして、中2日でさらに短い負荷で追い込みます。この間の2日間のつなぎは、長めの距離を踏んでいます。これもスタミナを忘れないようにするためです。
 この短い負荷の翌日は、20〜30キロの長めの距離をゆっくりとしたペースで踏んでいきます。ここでもスタミナを押さえておきます。ただし、消して追い込まずに力を貯める感覚で実施します。実はここに大きな意味があります。ある程度「ポイント練習」を消化してきているとめの距離は苦ではありません。 スタミナを蓄えた上でスピードを入れていくと、調子が上がって一気にピークに近づいていきます。ここで長い距離をゆっくり踏むことで、調子が上がり過ぎないように押さえているのです


<究極の「ポイント練習」へ>
そして次の「ポイント練習」が最も過酷な練習になります。そしてこの「ポイント練習」こそが、最終的たどり着く「究極のポイント練習」といえます。
まず、目指すレースの距離(箱根駅伝であれば20Kなど)のタイムトライアルを行います。そして、ゴールしたら同じ距離のビルドアップを行い、呼吸が落ち着いたらできるだけ早くレースペースに持っていきます。この時、タイムトライアルのゴールから次のスタートまでは、時間をおかずにゴールしたらそのまますぐにスタートするのです。
 箱根駅伝前にはスタート前にゴール後に何をやるのかを全く知らされずに行うこともほとんどでした。
また、ある時にはタイムトライアルゴール後に、50m〜100m程JOGしてさらに5KMタイムトライアル、さらにゴールしてそのまま5KMビルドアップを行います。

 それはもう目が回る、選手の中には神宮外苑の内側に倒れこむ選手もいるなと、まさに決死の練習です。雑巾を絞ってなお絞る、これが極限の「ポイント練習」です。 
正直言って、それまでの練習はすべてこの「究極のポイント練習」ができるための練習であるといっても良いかもしれません。
 先に説明した「長く速く走り続ける力」 スタミナとスピードを1つのした力として結びつける最終的な練習です。 
これまでの練習でもはや試合の距離は、自分の中では全く長い距離ではなくなっています。どんなことがあっても走りきる距離観が出来上がっています。

しかし、ここまで追い込むと故障したり体調を崩すのはまさにこの時期。頂上を伺うこの時は、まさにキケンと隣り合わせなのです。
(フルマラソンの場合は、頻繁に40キロ以上を走るのは身体への影響はかなりのものがありますので、ここでは駅伝、ハーフマラソンまでを想定しています。)


<レースまでの微調整>
  「究極のポイント練習」につい説明しましたが、これらの練習はダメージも大きいことからレースの2週間前には終了します。ただし、いきなり練習の質や量を減らしたりはしません。身につけた力を温存するために、ゆっくりと長めの距離をこなしながら時には短い距離のスピード刺激を入れながらつないでいきます。
 実はこの時点で頂上アタックは間近なのです。調子は一気に上がって来ます。ただまだ本番には早すぎます。  ここで記録が出てしまうと、調子が良いと思いがちですが、本番ではもう山を下り始めているのす。 あくまで追い込みすぎず、あえて抑え気味に過ごし、頂上アタックの準備を進めます。 ある意味、慎重かつ冷静に我慢が必要な時期でもあります。
 感覚的にいうと、多少足が重いことがベストであり逆に足が軽く感じることが要注意です。もし足が重すぎると感じたら毎日の練習の最後に強めのスプリントを入れておくか、足が軽く感じたらゆっくり長めのJOGでつないだほうが良いでしょう。
 まさに微調整であり、古いラジオの周波数をつまみを回しながら合わせていくイメージです。


<仕上げと引き金>
さて、レースの1週間前、いよいよエンジンを暖めて、アクセルを踏み込む時です。
レースの4日前、レースの3/4程度の距離を想定するレースペースで入り、そのまま感覚とイメージを確認しながら追い込むことなく気持ちよくあがります。少し物足りない感じの上がりでOKです。
これが「仕上げ」です。 
そして、レース前日に1000m程度のピリッとした刺激を入れます。これが「引き金」になるのです


【工程表の作り方】
 このように数ヶ月を経て、積み上げて最後の頂上アタックは、一つ一つが慎重で緻密な調整の上に進められているのです。
ここでは、私の箱根駅伝に向け手のプロセスを中心に例示させていただきました。
 ただ、人によって経験値も違えば、置かれている環境も違うので、そのための工程もさまざまなはずです。100人いれば100通りの行程があるのは、当然のことです。自分の中でもある程度の細かな基点となる部分は決めても、そこに至る過程やつながりは、状態によって変わります。決まったマニュアルはないのです。 ひとつだけ共通して言えることは、その工程は単なる思い付きではなく、目標とするものへのアプローチするイメージがまずあって、それを実現するために必要な要素を消化していく過程は、時間をかけた緻密な設計図として持っていなければならないということです。
では、その設計図(行程表)はどのように作っていくのでしょかうか?

 
<1つの目標を達成するための行程表は逆算で作られる

 レースの日や時間は決められています。そこにピークを合わせるためにいつ何をして、どのようになっていなければならないか、最終目的地から逆算して今何をしなければならないかが決まるのです。

<完成図は常に頭に描きつつ、その時々を大事に見つめること>
 
剣術に遠山の目付けと言う言葉があります。相手と対峙したときに遠く山を見るごとく、全体を見つつ、相手を見なさいと言うことです。
 たとえ10キロの練習でもそれだけを見るのではなく、全体を構成するする大事なピースの一つなのです。

<一日一日に意味があり、決して無駄なことはない>
 どの内容にも必ず意味があり、決して無駄なことは無いのです。たとえ10キロのつなぎであっても、それまでの内容を踏まえて、次につなげる流れの重要な一つの要素なのです。
 それは先程の全体を見ると言うことにもつながりますが、スポットとして見るのではなく、ずっとズームを引いてみることが大事なのです。

<工程の途中に進捗状況をはかる評価の基点を設定すること>
 
言い換えれば最終目標に対して中間目標を設定し、そこで修正をはかるのです。この間の小さな行程表の積み重ねが全体の行程になります。

<常に柔軟性を持つこと>
 長い過程の中では、さまざまな状況に影響を受けることは必然です。時には社会的な事柄や気候などの自然環境、そうかと思えば自分の体調など、予定通りに行かない事があります。
 もちろん、行程を堅持するための環境作りや節制などの自己管理が出来なければ、やり遂げることは出来ません。しかし、時には多少後戻りしたり立ち止まる事があっても、それは想定しておかなければなりません。頑なではなく必ず生じる修正のための余力を心に持っていたいものです。
 総じて言えば、しっかりとした骨格に柔軟な筋肉です。


【最後に言いたいこと】
 
今回は、長距離走での工程表についてお話しをしましたが、それは何もスポーツに限ったことではありません、勉強や仕事においても1つの目標に向かって取り組む時には、同じ様に自分の中で工程表を持つことが大事です。
 その時には常に目標を見つめて、時には厳しい内容に立ち向かい、乗り越えていかなければならないことは全ての工程表に共通する要件であることは覚えておいてください。